ジジイと呼ばれる大家⑭食欲の秋

そろそろ今年のボージョレ・ヌーヴォの解禁日である。

ジジイの家にも『まがい物』ボージョレ・ヌーヴォが登場する。ご存じのとおりジジイの家のワインは自家製。今年の夏もジジイ仲間の一人である某大学図書館司書長の所有するガラージ(車庫)が、自家製ワイン工場と化した。今年から孫達もチャイルド・レイバー(児童労働)として参加し、無法状態のワイン作りにますます拍車がかかる。常連のメンバーは、イタリアンやアイルランド人の酒好きネイションを代表に元日本人やそれとなくカナダ人など、一歩間違えると全く役に立たないチームも参加しているのだ。

こちらは、来年用のワインの準備。潰した葡萄を2週間ほど発酵させプレスする(注:本家ボージョレ・ヌーヴォの生産工程は、マセラシオン・カルボニック法 [Maceration Carbonique] で葡萄の房を潰さずにそのまま発酵タンクに入れて密封)ジジイのプレス方法は、言うまでもなく原始的な完全手動式。

葡萄ジュースが、プレスされると芳醇なアロマがガラージ中に漂う。♬

チャイルド・レイバーたちが、葡萄ジュースに指を突っ込み、ペロペロ。自家製ワインの隠し味は、子供たちの手に着いた『ばい菌』なのである。笑 

しかも、末っ子は、コッペパンをかじりながら『バケツ係』をしていたので、今年のワインには、子供たちの『ばい菌』に加え『パンくず』も入っている疑いが高い。汗

あれほど、白い服は着て来るな!と警告したにも関わらず、白いTシャツで『バケツ係』に挑むペロペロ軍団。ワインのプレスが終わる頃には、彼らのTシャツは、見事に紫色に染まっていた。 プレスが終わると、搾りかすのお片付けである。この搾りかすは、ジジイ特製グラッパの原料になるのだ。(グラッパは、ジジイと呼ばれる大家⑪参考)

5世帯分の1年分のワインを準備するので、作業は丸1日を要する。ご老体のジジイ達には、ちょっとした一仕事である。私もペロペロ軍団も最後は、投げやり。ガラス樽にたっぷり入ったジジイの分け前をオンボロトラックに積んで、年中行事は終了!遠き山に日ぃ~は落ちてぇ~♬いざ、家路に。

食欲の秋である。夏に準備をした来年用のワインは、平和に発酵中。

晩秋のバンクーバーを一言で表すと『雨ザーザー』。気分が落ち込みそうな天気が続くと、ジジイが気晴らしにテナントの皆を夕食に招待してくれるのだ。もちろんジジイの手作りディナーと底なしのストック量を有するワインが振舞われる。普段のジジイと呼ばれる大家シリーズは、ジジイの『やらかし』ばかり記録しているが、ジジイの得意料理も紹介しよう。

エントリー#①ポレンタ

ポレンタは、トウモロコシの粉(コーンミール)を水と塩で炊いたイタリア北部の伝統料理。冬になると何故だか食べたくなるポレンタ。ジジイ曰く、美味しいポレンタの作り方は、細挽きと粗挽きのコーンミールを両方混ぜて作ることだそうだ。

左写真は、粗挽き[Grossa]コーンミールで、右写真は細挽き[Fina]コーンミール

ブルーチーズ(チーズは何でも良し)やカリカリに炒めたパンチェッタ、ガーリック・ソテーにしたホウレンソウ等をトッピングすると、更に美味。

エントリー#②タリアータ

タリアータは、イタリア語で「薄くスライスした」という意味。ステーキにセルバチコ、パルメジャーノ、トマト、バルサミコ酢ソース(甘いバルサミコ酢)をトッピングするとできあがり。

エントリー#③手作りニョッキ

お芋を蒸かして、ニョッキをスクラッチから手作り。ポイントは、生地はこねくり回さず、切るようにして混ぜる事。粉(個人の好みで薄力粉または強力粉を選ぶ)はできる限り少量に押さえることで、ニョッキの仕上がりが、お口の中で溶ける食感に仕上がる。今回も御替3回。自負できないが、小学生に負けない私の食欲。

エントリー#⑤元祖イタリアンデザート・ティラミス

デザートが登場する頃には、ジジイのディナーテーブルは、陽気な酔っ払いで大騒ぎ。何故かぐちゃぐちゃに盛り付けされてしまった私のティラミス。見た目はいまいちだが、お味は最高に素敵なデザート。

そんなこんなで、外はどんよりとしているが、ジジイのボロ屋はいつも笑いに包まれているのだ。