読書の秋:When Breath Becomes Air ‐Paul Kalanithi (著)‐

今年のカナダ西海岸の夏は、10月下旬まで続いたかと思えば、雨が降り始めた途端に気温が急激に下がり、2-3日ですっかり秋模様である。秋の季節になると、理由はこれと言ってないが、懐かしい気持ちになる。もう会えなくなってしまった人のことを懐かしむのか?過ぎてしまった思い出が恋しいのか?これから来る長い冬に対してちょっぴり不満なのか?庭の野生リスが忙しそうにドングリを地面に隠している姿は、思い出を1つ1つ埋めているようで、見ていて微笑ましいものがある。

秋と言えば、読書の秋。早速、リーディングリストでも作るか!(*゚▽゚)ノ

と言うことで、今年のリーディングリストは、BTSナムジュンの愛読書を参考にしてみよう。BTSの3つのアルファベットだけで、おばちゃんのモチベーションは既にHighである。

私は、個人的に本を沢山読む人が好きである。なぜなら、私にとって興味をそそられる人とは、個性的な考えを持ち、いい意味で一癖も二癖もあり、『興味のポケット』をいっぱい持った人たち。特に男性に関しては、こちらの条件は必須である。ちょと昔の韓国ドラマ用語を利用すると「脳がセクシーな男」。

「結局、男と女の情熱が終わり、夫婦になり、子供が育ちあがり、ハゲになってブヨブヨになった俺に女房がついてきてくれるのは、『俺の脳がセクシー』だからさっ」と、昔の上司も言ってたっけ。確かに美男子であった昔の面影すら微塵もないハゲ散らかした男が誇れるのは、脳とハートだけだ。納得。

今日ご紹介するのは、Paul Kalanithi氏のWhen Breath Becomes Air。Googleで『ナムジュンの愛読書』で検察して出てきた本のうちの1冊なので、彼が読んだかの実証は無い。

When Breath Becomes Airは、スタンフォード大学病院で研修中(レジデンシープログラム)だった脳神経外科医のPaul氏が、自身の肺癌の状況を末期として受け入れたことで書き始めた闘病記である。Paul氏の本は、未完成、生まれたばかりの娘に書いた涙流さずには読めないメッセージ、で終わるのだ。その次のページは、残された奥様が書いたエピローグ。家族の愛で持って締めくくった闘病記である。

自分の命の限界を知った時、人間の取る行動や思うことは、人それぞれである。それでいいのだ。優劣など決して無い。長く生きていれば、その分、先に送り出さなければいけない人の数も増える。献身的に介護をしている奥様の気持ちを無視して生きることを完全に放棄した夫たちもいれば、延命治療は絶対嫌だと言っておいて延命治療を選んだ母方祖父、20年以上も「俺は長く生きられん」と言い続け、あの世からのお迎えに全く縁のなかったヘビースモーカーの父方祖父(粋なじいさんだった)、心の傷と生きていくことを諦めて自殺してしまった君。かつての偉人たちが残した何百もの『死の名言』を読んでもしっくりこないのは、それぞれの人生は、唯一無二の経験であり、誰一人、生と死に対して同じ意見を持たないからなのだ。

どのように人生を生きるか?どのように人生の幕を閉じるのか?結局、決めるのは自分次第である。私たちは、『長生きするであろう』と『長生き』が当然であるかのように毎日を過ごしている。幸いなことに末期とは未だ無縁な私たちの日常では、残された時間とは、ただ漠然とした時間のスケールでしかないのだ。うーん、自分は、最近、努力してるのかな?反省。

When Breath Becomes Airも、この世に存在した人間が残した『人それぞれの』生きた証と幕引きのストーリーである。実際に、Paul氏と同じように残りの人生を有意義に生きた(または生きている)人々は、沢山いると思う。ただ、皆が闘病記を書かなかっただけの事。絞り出してもやりたいことはやりたいと思ったPaul氏だからこそ、身体の限界まで執刀し、闘病記を執筆し、子供を作り、家族を愛し、彼なりの『努力』の中に意味を見つけ、残りの時間を有意義に過ごしたのだ。私が最近絞り出したのは、魂からインスパイア―された行動ではなく、ポテトサラダに入れたキューピー・マヨネーズだった・・・再び反省。

Paul氏の闘病記によく登場するのがStrive【努力】である。文学を勉強していても、医学を勉強していても、研修生として激務が当たり前の日常でも、自身が末期癌の病人になっても、ステージごとに変わる自分自身への挑戦と彼の前向きな『努力』に勇気をもらえるのだ。

下記は、彼の本からの引用【パート1の最後】(後のエピローグで奥様も同じ引用を紹介している)

You can’t ever reach perfection, but you can believe in an asymptote toward which you are ceaselessly striving.

漸近線を比喩に例えるという彼のインテリのセンスが輝いている。絶え間ない努力(=ceaselessly striving)は、漸近線(=asymptote)のように自分のスタートポイントから遠ざかれば遠ざかるほど、線が近づいていくが、決して交わることのない(=You can’t ever reach perfection【完璧など無い】)という、完璧には到達できないけれども、日々の努力を惜しまず、努力のもたらす結果を信じるという姿勢である。素晴らしい。

本のタイトルは、When Breath Becomes Air。直訳すると、「呼吸が空気になる時」かな?日本語のタイトルは、『いま、希望を語ろう』・・・どこをどう間違えて、こんなタイトルになったのか・・・・それはさて置き、最近は、活字離れが当たり前の忙しい世の中になってしまったが、目標 今年の秋に1冊! ୧( ˃◡˂ )୨

みんなに、いい本、いい出会い、良いことがたくさん起きるように、おばちゃんは、カナダから応援していますよん。