ジジイと呼ばれる大家⑥ホーダー(ため込み症?)

ジジイは、ホーダーである。ホーダーとは、『ためこみ症』。ジジイの自宅は、すっきりと片付けているのだが、捨てられない物を収納する大型物置を2件も敷地内に建てている。独裁者と呼ばれる私は、ジジイに容赦しない。この家に入居して以来、容赦なく(しかも許可なく)ジジイのゴミを捨て続けている。

「また、捨てたか!?この独裁者!」ジジイが、ゴミコンテナからゴミを救出しようとする。

「ジジイよ、精神疾患になりたくなかったら、今すぐその手に持っているゴミをゴミ箱に戻せ」独裁者の声ではない、天国のお父ちゃんとお母ちゃんの声として心得よ。ホーダーには、明確な治療法がないのだ。問題が深刻化したら、苦しむのは自分だぞ。

「ジジイさ、自分が死んだら、このゴミ誰が片付けるの?」

味気ない会話である。

「これからは、①『自分に必要な物』(=①は、必要ではなくなったらゴミになる)と②『捨てられないという理由だけで持っている物』(=②は、既にゴミである)と③『自分の人生が段ボール1個分だとしたら、その中に絶対保存しておきたい思い出の物』(=③は、ジジイの遺品になる。ジジイが、立派に生涯を遂げた後には、遺族に分ける予定)の3つの選択を基準に整理整頓しなさい」と、ジジイに段ボール箱を渡した。

その③用段ボールの中に1つだけ、私が選んだジジイの思い出の品物を入れておいた。それは、The Winston Dictionary (英語の辞書)である。カナダに移民して間もないジジイ少年が、使っていた英語の辞書。私たちの子供の頃は、アナログ時代だったので、『名前』や『住所』などを書いたスクールグッツは沢山あった。The Winston Dictionaryの表紙の裏ページには、ジジイの手書きで住所、名前、指紋、家の地図まで記録してある。ジジイのクリエイティビティだけは、子供のころから、ピカイチだ。

という事で、ジジイの整理整頓プロジェクトが始まった。一か所が片付くと、別の場所にゴミがたまる。別の場所が片付くと、新たな場所にゴミがたまる。。。。なぜだ?ジジイの習性を観察していると、ゴミを右から左に、左から右に移動しているだけではないか!?

ジジイ、もう悪あがきは止めろ!笑

もちろん、ジジイの整理整頓プロジェクトは、単純にゴミを捨てる作業だとは理解していない。思い出の片付け作業なのだ。ジジイの会社の一大プロジェクトの製図などが見つかった時は、ジジイの当時の仕事の思い出話に耳を傾ける。コンピューターグラフィックの無い時代の設計図やデッサンの完成度は、素晴らしい。現在では、有名な観光地になったプロジェクトの製図も出てくることがしばしばある。時々、ジジイの倉庫からは、びっくりするぐらいのアンティークが出てくる。お宝とは言えないが、何百枚とある旅行先から送られてきたポストカードや家庭用レトロ黒電話などなど。たまぁーに、忘れられていた自家製ワインボトルなども出てくるが、既に酢に変わっている。笑

まあ、とにかく笑いのネタが絶えない、ジジイのゴミ山。ジジイの思い出もさぞかし楽しいエピソードばかりであろう。ジジイの断捨離プロジェクトが始まって3年目、まだまだ終わりそうな気配はない。