ジジイと呼ばれる大家㉑何もしなくても巻き込まれるジジイ

それは、平和な土曜日の朝10時17分。ガシャーン・・・・凄まじい音が聞こえた。

すかさず、スマホを手に取り『ジジイ、生きているか?』とメッセージを送る。

返信無し。既読履歴無し。

ジジイめ、落ちたか?

パジャマのままで庭に出て、ジジイが転がっていそうな場所を確認する。

あれっ、いない・・・

裏通りと庭にジジイが転がっていないことを確認して、表庭に足を運んだ。そしたら、S(隣のユニットのブロンド姉ちゃん)も外に出ていた。

「おはよう、S。ジジイが転がっていないか探してるんだけど」と、私が言う。

Sは、「あんたもジジイが落ちたと思った?」と、笑いながら 「違うのよ、今回は・・・」と言って、道路を指さした。

OMG(オー・マイ・G)。

そこには、追突されて滅茶苦茶になったジジイの車とジジイがいた。

「おい、ジジイ。生きてたの?」

ジジイは、すかさず「俺のせいじゃないぞ」と、言った。

誰もお前に言いがかりをつけてはいない。それにしても、ほっといてもブログのネタを提供してくるジジイは、立派だ。

「それで、何が起きたの?」と、聞くと、ジジイは、「大きな音がしたので、外に出てみたら、俺の車が追突されていた」としょぼけた。

「追突した車から出てきた中国人のお姉ちゃんは、『コントロールを失った』と、一言だけ残して、現場から立ち去ったんだよね・・・・」と、ジジイが、またしょぼけた。

ジジイの車を破壊して、風のように姿を消した中国人女性。刺客か?!

「まあ、警察が来てくれたから、後は任せておけばいいんじゃない?」と、ジジイを励まし、「トランクに入れてあった物とか壊れていなかった?」と、聞くと、ジジイは、「24 x 355 ml の8箱分のビールは、無事だった」と、ほっとしている様子。

あんな小さいトランクにそんな数のビールを入れていたとは・・・ジジイよ、お前の行動は、未だに分からん。

そんなこんなで、土曜日の平和な朝は、ジジイの被害現場の見学で終わった。Insurance Corporation of British Columbia【以下ICBC(ブリティッシュコロンビア州保険公社。 カナダブリティッシュコロンビア州で自動車などの強制保険市場を独占する公営企業)】の下請けさんがレッカー車でジジイの事故車を取りに来てくれたので、道路に散らばった破片をかたずけてその日の大仕事はお終い!

それから数日後の事。

「俺の車が行方不明だ」と、ジジイが焦っているではないか?

さすがカナダのずさん公営企業。ジジイの車のトラッキングを怠った挙句、車がどこに行ったか分からないとは!アライグマに続いて、ICBCもなかなか乙な事をしてくれるではないか!

それから数日間、ジジイはしょぼけていた。笑