特別な日にはフォルマッジョ・ディ・フォッサ(Formaggio di Fossa)

去年のクリスマス時期に紹介をしようと思っていたのだが、うっかり忘れてた。今日、ご紹介するチーズは、フォルマッジョ・ディ・フォッサ(Formaggio di Fossa)。イタリア北部エミリア・ロマーニャ地方のソリアーノで作られているチーズで、クリスマス時期になると大家のジジイが買ってくるチーズなのだ。このチーズ、生産過程も風味も一癖あるヤギの乳チーズなのである(牛の乳で作られることもあるそうだ)。

フォルマッジョ=チーズ。

フォッサ=(大きな)穴。

チーズにあいている穴ではない。チーズを地下3メートルほど深く掘った穴に封印して3か月ほど発酵させ11月25日の聖カテリナの日にチーズを穴から出すという、祭儀がかったチーズなのだ。密封された穴の中は、限られた湿度と40度以上になる室温で、チーズがいい感じに臭っさ~く発酵する。よって、ジジイの自宅キッチンでもフォルマッジョ・ディ・フォッサのパッケージを開ける瞬間は、冗談ではあるが儀式のように丁重にチーズを扱う。

チーズがプレートに乗ったら最後、私は遠慮せずにパクパクと食べる。美味しいっ!

「それにしても、何でチーズを地中に埋めたの?ジジイ知ってる?」と聞いたら、「昔、侵略者からチーズを守った村人の知恵が、この素晴らしいチーズのフレーバーを生み出したのだ」と、ジジイは言う。他に類を見ないチーズの熟成方法は、村人たちの必死のサバイバル術であったのだ。味しいものは『隠しておく』というのは、日本人だけでなくイタリア人もすることなのねー。笑

気になる味は?と聞かれると、簡単には答えられないのである。フォルマッジョ・ディ・フォッサのフレーバーは、とにかく一度食したら忘れられないほど個性的なのである。臭いチーズを食べ慣れていない人には、『強烈』と表現したほうが分かりやすいかも知れない。あえて私の乏しいボキャブラリーを振り絞って表現すると、『ドライな辛さが特徴のしっかりと発酵したヤギ乳チーズに土臭いフレーバーが心地よく香る』である。商品によっては、ハーブのフレーバーを効かせたフォルマッジョ・ディ・フォッサもあると聞いたことがある。ジジイは、爺さんなので、昔ながらのフォルマッジョ・ディ・フォッサを買ってくる。私のお気に入りの組み合わせは、フォルマッジョ・ディ・フォッサを蜂蜜にディプして食べる方法である。日本酒もこのチーズだったら合うかな?

フォルマッジョ・ディ・フォッサに出会うきっかけがあったら、是非、お試しあれ!