お気に入りの博物館‐大英博物館①

私が学位を取得したのは、ロンドン大学。ロンドン大学は、英国国教会の信徒にのみ進学が許されていたオックスフォード大学とケンブリッジ大学のエリート階級主義に対抗して『人々のための大学』として19世紀に設立された連合大学。私の通っていた大学は、SOASというUKでは唯一の地域研究に特化した教育・研究機関なのだ。しかも、人類学部の国内ランキングは、常にトップ10入りをしていて、規模が小さい割には成績が優秀な大学。総長は、アン王女で、私の在学中に、1回だけアン王女の訪問を遠くから拝見する機会がありました。ロイヤルファミリーが訪問しているにもかかわらず、学校はいつもどおり、メインホールの右にあるスチューデントユニオン(学生組合)とその下の階にあるパブから、強烈なマリファナの匂いが漂う始末。まっ、それが、SOASの日常です。当時の私のクラスメートたちは、がーっと勉強をして、息抜きに校内のパブでパインツを1杯飲む。なんとまあ平和な学生時代。懐かしいなー。

おっと、話が、脱線。今日お話したかったのは、私のお気に入りの博物館である大英博物館です。SOASから徒歩3分圏内に北口があったので、暇さえ見つければ、大英博物館に足を運びました。授業や図書館での自主勉強が一段落つくと、足が勝手に博物館の方に向かうんです。私がロンドンに来たばかりの頃は、旧Reading Room(大英図書館閲覧室)が大英博物館内にありました!書籍や書物がSt Pancrasに移される前の時代。今では、Reading Roomがリストレーションされて、Great Courtもすっかり定着していますよね。

ああーっ、チャンスさえあれば、旧Reading Roomを訪れ、カールマルクスの座った椅子に座って、資本論を読みたかったー。最近の大学生は、エンピリカルな検証を教材対象にする傾向が強いせいか、昔の学生ほどクラシック書物を読まないと聞きますが、未だ資本論を読んだことが無い学生は、読んでみて!ボンボンで高学歴が、書いた流暢な文章は、(マルクスが、搾取される貧困層を救おうとしたか否かは、別問題ですが)素晴らしい書物です。

またもや話が脱線。失礼しました。大英博物館のお話に戻ります。『文化財返還問題』やら『略奪品の寄せ集め』など、批判も多い博物館としても大英博物館は有名ですよね。イギリスの歴史自体が、植民地、帝国主義などなど、周りの国々を巻き込んで、時には迷惑をかけて繁栄してきたのだから、博物館も学問も歴史の副産物なんです。ここでは、博物館の政治・文化的な問題点は語りません。ちなみに、私の大学院での卒論は、博物館の展示会における倫理や道徳を議論したので、語らない=無視するという態度では無いです。

収蔵作品数‎は、約800万点。うち、15万点ほどが、博物館に展示されています。大英博物館の倉庫もすごいんだよーっと、当時の卒論調査に協力してくれた大英博物館のキュレターさんが言っていました。皆さんもご存じのとおり、パルテノン神殿の彫刻の一部から、モアイ像、古代アステカ文明品、ベニンの青銅器、インドのストゥーパ(仏教遺跡)、ロゼッタストーンなど、古今東西から集められた展示物が盛りだくさん。特に、いわくつきのミイラは、たくさんのがガゼネタがあるんです。例えば、『タイタニックを沈めたのは、ミイラの呪い』とか、『墓を荒らした者に祟りが起こった』とか、『館内の亡霊事件』など、興味深いネタばかり。

当時、よく立ち話をした大英博物館の警備員のおっちゃんによると、『館内の亡霊話』=ドアが勝手に開けられている=ドアを閉め忘れた警備員の“言い訳”らしい。笑

ミイラの呪いに関しては、墓荒らしが、悲惨な目にあうのは、当然。お宝を狙った仲間が横取りを企むことだって、墳墓の中のどよーんとした空気が体に良くなかったり(実際にカビや細菌の存在が確認されていないのが不思議なくらい)、当時のメディアが話を大げさに報道したり、お宝の冒険話には、エキサイティングな要因が欠かせません。宝が簡単に手に入ってしまっては、宝の価値が下がる。ミイラも同様。

大英博物館に行って、募金しないで帰ってきたチープな観光客には、ミイラの祟りがあるぅ~と、噂を広める努力をしていますが、未だに、効果現れず。大英博物館を訪れる際には、是非、イギリスの歴史をマテリアル(展示物)というレンズから感じてください。