『なでなで』されながら育つチーズ14 Arpents

今日紹介するチーズは、カナダのケベック州で生産されているウォッシュタイプのチーズです。その名は、14 Arpents。ウォッシュタイプのチーズとは、外皮をお酒(ワイン、ブランデー、ビールなど)または食塩水で洗いながら熟成させるチーズで、チーズの発酵は表面に着いた菌で完熟させます**。ということは、チーズの皮は、臭いんです。

14 Arpentsに近い馴染のあるブランドをあげるならフランス産のマンステール(Munster)やエポワス(Epoisses)。14 Arpentsの生産者のこだわりは、ジャージー種(イギリスの茶色い牛)の乳で、チーズを作っています。ホルスタイン種の牛の乳に比べると、ジャージー乳は、搾乳量が少ないのですが、脂肪分も無脂乳固形分も乳たんぱくも濃厚なんです。

気になる『お味』のほうは、マンステールやエポワスに比べると外皮にパンチが効いているというか、やや荒っぽい仕上がりのように感じます。ただ、その荒くれ外皮と中のクリーミーなチーズ(クリーミーな部分のお味は、ブリーのようなお味です)のコンビネーションに14 Arpentsのファンは多いいのではないでしょうか?ですから、外皮は決して捨てずに、皮も中のクリーミーな部分も一緒に食べていただくことをお薦めします。

私の陶芸作品のお皿に盛り付け。春のお花を添えて、臭皮のチーズは、瞬く間にオシャレスイーツのよう!

ウォッシュタイプのチーズのルーツ(発端)は、肉を食することができない修道僧さんたちが、チーズを(いかに肉のフレーバーに匹敵するほど)リッチな風味に仕上げようと、いろいろと工夫をされたそうです。禁欲から生み出されたこの手法、マックス・ウェーバーの「プロテスタントの倫理と資本主義精神」に議論されるパラドックスですね~。宗教的束縛で禁欲の生活の果ては「やってらんねぇ~」という反動で、資本主義が芽生えてしまったという彼の代表作の1つ。今日の午後は、哲学書でも片手にお庭で森林浴を楽しみながら、禁欲の“禁”を”菌“に代えて、チーズも肉もデザートも盛りだくさんのランチでも楽しも―っと!

**レンネットで凝固されたチーズ(カード【Curd】)を型に落とし(14 Arpentsの場合は、四角型)、チーズの表面にお塩をしてから、職人さんがチーズの状態をみながらチーズの皮をお酒または食塩水で拭き取ったり洗ったりして成熟させるんです。『なでなで』されながら育つチーズです。