失敗がきっかけ
楽しい思い出ばかりのイギリスなのだが、あえて『イギリス思い出話』の第1回目のブログは、私の失敗話から始めようと思う。30年前の日本は、高度経済成長を遂げ、国民の大半が中産階級と信じていた国。『黄色いバナナ』*と皮肉がられても言い訳のしようがない『自分たちは特別』的な優越感も少なからずはあったはず。
私の失敗話というのは、当時のボーイフレンドと夕食中に交わした会話。
「イギリスの失業率ひどいんだから、イギリス政府は、なぜカリブ系やインド系移民を在留させたの?」
第二次世界大戦直後に始まった旧植民地からの移民の流入と大英帝国崩壊を直結してしまうという、何とも浅はかな18歳の質問だった。
もっと驚いたのが、私の質問に対しての彼の反応だった。いつもニコニコの彼が、悲しい顔をしたのだ。その後、『彼が悲しい顔を見せた原因』を知りたかった私は、図書館で多文化主義、移民問題、植民地の歴史、人種・宗教差別問題、政治や歴史など、とにかく調べた。他所様の国の『事情』に関して全く無知で無教養だった私が、ここまで真剣に『他者を知ること』に力を注ぐことができたのは、無言をもって私の間違えた考え方に気づかせてくれた当時の彼の優しさなのかもしれない。
自分にかけているのは、フィランソロピーとヒューマニティーだったと気が付いた私は、大学での専攻を人類学にすることに決めたのだ。
*見かけはあからさまに黄色人種であるが、中身は、白色人種のつもりでいる。悲しい事実ですが、昔の日本人は、アジア諸国の人々への偏見や差別的な考えは、今以上に深刻な問題だったと思います。