お気に入りの博物館‐V&A②

ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(Victoria and Albert

Museum通称V&A)は、私の学生時代のインターンシップ兼アルバイト先でもありました。

V&Aは、優雅な博物館。トラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリー(National Gallery)とは違い、展示物がそれほどポリティサイズ(政治化)されていないのが特徴です。ナショナル・ギャラリーのメインホールは、英国が誇るターナーの作品が展示されており、英国=中心という、展示物の配列が非常にプロパガンダ色が強いです。一方、V&Aは、装飾芸術とデザインを専門とし、コレクションの質もセンスもピカイチ。展示物のバリエーションの多さは、V&Aがダントツです。今では、すっかり綺麗にリニューアルされて、昔のレトロな面影が無くなっているV&Aですが、展示物のバックグラウンド風景が変わると、ここまで展示物に影響が出るのか~と、博物館学の奥の深さを改めて実感。

学生時代の話に戻りましょう。私が何故、V&Aでインターンシップをすることができたのか?それは、幸運な事に友人の紹介で、素晴らしいチャンスに巡り合うことができました。

当時は、V&Aの館内に学芸員さんたちのオフィスがありました。今でもそうなのかな?各部署によって専門分野が異なるので、図書館のようなオフィスもあれば、倉庫のようなオフィスもあり、担当部署以外のオフィスにお使いに行くときは、このドアの向こうは、どんな不思議空間があるのか?と、ドキドキしながらノックをしたのを覚えています。興味深々のインターン生に、「展示物に触わってもいいよぉ~」と気軽に許可してくれる優しい学芸員さんもいました。もちろん、自分なりに展示物の扱いを心得ておりましたが、緊張しました。

展示会が近づくと、学芸員さんたちは、企画書、リサーチ、カタログ作成など、多忙になります。私の担当は、あらゆる分野での整理整頓。単純な作業ですが、学芸員さんたちが、仕事を円滑に進められるように、自分なりにいろいろと工夫をしました。インターンシップ先を博物館に選んだ利点は、他にもありました。来館者が来ない時間に、展示物や展示会場の見学ができるんです。だーれもいない博物館や展示会場、贅沢なひと時でした。

インターンが終わる時間が来ると、次は、ユニフォームに着替えて、アルバイト先へ!V&A館内のミュージアム・ショップでアルバイトをしていたんです。アルバイト料も悪くないし、インターンシップの場所と同じだから一石二鳥と、軽い気持ちで始めたバイトでしたが、またまた幸運にも、同僚が、楽しくて良い人たちばかり。博物館好きが集まり、マルチカルチャーかつ宗教多元主義、そして、私のような留学生からLGBTQの同僚まで、みんなが自由に自分らしく働くことのできる環境でした。個性爆発の老若ゲイおっさんたちにからかわれる(いい意味で可愛がられてたと思います)のが日課になってしまい、そんな私をかばってくれる優しいイギリス人のお姉さん達。仕事の後に文化センターの行事や夕食に誘ってくれたヨーロッパ出身の同僚たち、いつも優しい日本人の先輩お姉さんたち、面白い本を見つけると棚卸にする前に、私に購入したいか確認してくれた中国出身のおじちゃん。また、篤信のイスラム教徒の同僚がいたこともすごく勉強になりました。宗教や文化の違いを受け入れ、いつもお互いをリスペクトする気持ちを忘れてはいけないという事を学ばせていただいたV&Aアルバイト経験でした。

思い出話の最後にV&Aをこれから訪れる方に是非、立ち寄っていただきたいスポットをご紹介します。それは、パブリック・カフェ。各お部屋がJames Gamble、William MorrisそしてEdward J. Poynterの3人のイギリス人によってデザインされました。とても贅沢な空間!そして、V&Aの後も、体力が残っている方は、お隣のロマネスク様式建築物の代表例であるロンドン自然史博物館(Natural History Museum)にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか?ロンドン自然史博物館のBehind the scenes London: The Natural History Museum’s Spirit Collection tourもお薦めですよ。(ホルマリンまたはアルコール漬けの生物が苦手な人は、パスしてください)